交通事故・本人訴訟・和解の道のり

まえがき

・2年前に当時小学3年生の子供が交通事故遇いました。なんと、相手は任意保険に入っていませんでした。加害者は成人のくせに、親父にお任せと言う体たらく!すべて保障しますと言っていたのに、子供が無事だったのを確認すると(歯が1本なくなってしまいましたが・・・)飛び出した子供が悪いと言い出す始末。加害害者は、なんと同じ町内会の住人なんです。

・自分の立替分の自賠責保険請求を済ませると、なんら連絡がなくなってしまいました。自賠責保険は2年で請求期限切れです。事故も3年で時効になります。一念発起して、本人訴訟を起こしました。

事故発生

・平成16年2月8日午後4時30分に事故は起きました。私は娘とスクーターで家電量販店に行っており、突然、家内からの電話!「幸太郎が車にはねられた・・・」あわてて家に戻ると、そこには救急車と大勢の野次馬。鬼ごっこをしていて道路を横断した際にはねられたらしい。

・加害者のM氏は、神妙な顔つきで立っていた。なんと、信じられないことに任意保険に加入していなかった。幸太郎は、救急車で大学病院に搬送された。容態は、右頭部裂創、口唇裂創、上歯槽骨骨折、口内裂創。ICUに入ったが命に別状は無い模様。頭部MRI検査も異常なし。ほっと一安心。結局、いままで虫歯の1本も無かった前歯が1本欠損した。翌日に、加害者と加害者の父親が謝りに来て「きちんと事故の処理はします」と言ったのだが、ここから信じられない出来事が始まった・・・

事故現場

・事故現場は、自宅のすぐそばで道幅は3.8mしかなく、車がすれ違うのがやっとです。子供の飛び出しも十分予想され、飛び出したとしても徐行していれば止まることは十分可能です。子供の怪我の程度から考えると、加害者はよそ見をしていたと思われます。子供の友達が助手席に女性が乗っていてよそ見をしていたのを目撃しているのですが、その女性は逃げて警察にも証言していなし、迷宮入りですが・・・

  

事情徴収

・落ち着いたら来て欲しいと警察がいうので、事故から1ヶ月くらいたって警察に行きました。用件は、調書の作成?のようです。私はまだ加害者のM氏がきちんと事故の処理をしてくれると信じていたので(これが大間違いだった)子供が飛び出して跳ねられたと証言してしまいました。実際のところは、子供は事故当時の記憶が抜け落ちているために真実が分らないのに・・・

・裁判を起こして知ったのですが、M氏は、この証言によって罰金も免停も処分されていませんでした。いまさらながら残念です。事故にあったら、保障の決着がつくまで証言は控えたほうが良いようです。

加害者の素顔が・・・

・加害者のM市は、任意保険に加入していな理由を、軽自動車から普通車に車を買い換えたときに、手続きをしていないと言った。それも半年も・・・(自動車に乗る資格無し!)保険やに相談してみると言っていたが、保険屋もさすがに6ヶ月も忘れた人を相手にするわけが無かった。そして、「できれば自賠責の範囲で収めたい」と言う信じられない発言。結局、子供が無事とわかり、お金が惜しくなったようだ。

・事故を起こしたM氏(一応成人)は、なんと職業ドライバー!それにもかかわらず、事故の処理は、まるっきり父親任せ。親父も作業服でなんとなく怪しい感じ!身なりで人を判断してはいけないと思ったのが大間違いだったと後で反省することに・・・

そして半年が経過・・・

・事故から半年が経過しました。加害者からは何の連絡もありません。私は、保険屋に相談して損害賠償請求を作成して、示談書とあわせて加害者のM氏の家に持参しました。すると、お母さんが出てきて、とても無愛想な対応。子供が事故を起こしたとはとても思えません。いったいどうなっているのだろうと思いました。2週間以内に反論が無ければお金を振り込むように示談書に記載したのですが、M氏からは何の連絡もありません。

・しかたなく、こちらから電話すると父親が出てきて「お前子供が飛び出してきて癖に・・・」と言う発言!「加害者本人に換わってほしいと」と言うと「お前も被害者本人を出せ」と言う始末。被害者は小学生なのに何を考えているのでしょう。このとき、この人が普通の人ではないのが判りました。「きちんと対応してくれないならば裁判することにします。」と言うと「やれるもんならやってみろ」と暴言を吐く親父。任意保険に入っていないことが原因なのに!もし被害者が死亡したことを考えればこの対応はないはずです。加害者は成人なのに、電話にもでません。いったいどうなっているのでしょうか?こんな人は車に乗る資格は無いと思います。このとき、加害者親子が事故当日に謝りにきたときのことを思い出した。やっぱり、身なりは人を表している・・・

・保険屋さんに相談すると、「自賠責の請求を終了してから裁判したほうが良い」とのアドバイス。とりあえず、様子を見ることにしました。このときの請求額は、151,785円(加害者立替分を除く)でした。

面の皮が厚いとはこのこと

・加害者のM氏の父親から電話があり、「自賠責保険の請求をするために領収書を作成してほしい」との事。この間、電話でもめたのに「面の皮が厚い」とはこのことか!対応してあげないと話が進まないので加害者が立て替えた分の領収書を作成する。保険屋さんから自賠責の書類をもらうように言われていたのでM氏の父親にそのことをお願いした。(結局、対応してもらえなかったのだが・・・)

そして1年が経過・・・

・事故から1年が経過しました。その間加害者からは何の連絡もありません。やっとM氏の父親から連絡があり(どうやら加害者本人は成人にもかかわらず、すべて父親にお任せのようである)、「自分が立て替えた分の請求が終了したので残りは被害者から請求してほしい」との事???本来ならば任意保険で被害者に損害賠償が支払われた後に示談が成立して、任意保険から自賠責保険に請求するのが、M氏は任意保険に加入していなかったので、被害者が請求しないといけないらしい。

・誠意ある加害者ならば、損害賠償を支払って示談した後に加害者請求するらしいのだが、そんな相手ではない。驚くことに、この時点でM氏はは1円もお金を払っていない!結局、事故で不利益を被るのは被害者らしい。

自賠責保険請求

・自賠責保険の上限は120万円です。被害者の幸太郎は、前歯が1本欠損してしまった。だめもとでインプラント治療を請求すると、自賠責保険で認められた。(結局助かるのは加害者だが・・・)自賠責保険の時効は2年。書類をそろえるのに時間がかかり、もう少しで2年を過ぎるところだった。

・結局、治療費と慰謝料で請求額は120万円をオーバーしてしまった。つまり残りを加害者のM氏に請求しなければならない。M氏のことだから、素直に請求に応じるわけは無いだろう。裁判を想定して作戦を立てなければならないようだ。

弁護士相談

・私の会社は、交通事故相談が1回/週行われているので、これまでたびたび相談してきました。弁護士相談も1回/月行われているのですが、日程が合わないので弁護士会が行っている弁護士相談に行ってきました。結構若い弁護士が対応してくれたのですが、淡々と対応するためにちょっと人間味に欠けた内容でした。お金にならないからか、発言内容に責任を取らないといけないようにならない様にしているのか、あまり参考になりませんでした。結局、お金がすべてなのでしょうか?最近は、任意保険に弁護士特約が付いたものがあるので加入したほうが良いようです。当然、私は保険の切り替えに合わせて弁護士特約を付けました。

内容証明

・HPを検索したり、本を買ったりしていろいろと調べたのですが、下記の対応ができそうです。
1.小額訴訟:請求額が60万円いあkならば、たった1日の1回の裁判で、判決がでるというものです。
2.本人訴訟:140万円以下の金銭のトラブルは、簡易裁判所で裁判をします。
いきなり裁判を起こすのではなく、まずは内容証明で損害賠償を請求します。私は、以下の文面で内容証明を作成しました。

交通事故損害賠償請求書

私は、貴殿に対して、平成○○年○月○日に発生した、太郎(仮名)との交通事故の損害賠償を請求いたします。
本書面にて示談に応じていただける場合のみ、損害賠償額を減額します。
本書面到着後十四日以内に損害賠償金百万円をお支払い下さい。
損害賠償額の明細及び支払方法一通と示談書2通を、別便にて送付いたします。
損害賠償金支払い後、示談書に捺印して二通とも返信願います。当方の捺印後、一通を送付いたします。
もし、右記間内に、損害賠償金のお支払いなき場合は、訴訟その他法的手段を取らざるを得なくなりますので、ご了承下さい。

・内容証明郵便と示談書を送付して2週間がたちましたが、やっぱり加害者のM氏からは、何の連絡もありません。しかたないのでこちらから連絡すると、また親父が出てきました。損害賠償のことを聞くと、納得いかないとの事言います。納得いかない場合は、回答するように内容証明郵便に書いたのですが、相手が相手だから仕方ないのでしょうか。加害者本人を出してほしいと言うと「お前はしつこいから駄目だ」と言います。前から思っていましたが、事故処理を長引かせているのは、間違いなくこの親父です。「このままなら裁判になります」と伝えると、「やれるものならやってみろ」と強気の発言!この親父、被害者が無事だとわかってから、態度が急変してしまいました。それとも反省しているように見せたのは芝居だったのでしょうか。加害者が任意保険に入っていないからこんなことになっているのを理解しているのでしょうか?解決まで、時間がかかりそうです・・・

本人訴訟

本人訴訟を起こすには、まず簡易裁判所に行かなければなりません。損害賠償額が140万円以上の場合は、地方裁判所、140万円以下なら簡易裁判所の担当になります。簡易裁判所の場所は、HPで検索できました。簡易裁判所に行くと、年配の職員が丁寧に手続きについて教えてくれました。裁判所に提出するのは、訴状と証拠書類、申立手数料(収入印紙)と郵便切手です。私の場合は、子供が加害者なので住民票と委任状が必要になりました。訴状は、無料でもらえます。私は、証拠書類として以下の資料を作成しました。

1.交通事故証明書(警察に請求)
2.事故状況説明書(自分で作成)
3.診断書(病院で作成)
4.後遺症診断書(病院で作成)
5.交通事故損害賠償請求書(自分で作成)
6.保険金・損害賠償支払い証明書(自賠責保険より入手)
7.インプラント治療の見積もり(病院で作成)
8.慰謝料の請求(弁護士請求を適用)
9.過失割合(判例タイムズより抜粋)

・訴状の書き方を説明していただいたのですが、結局書き直しを指示されて、2回目で受理されました。損害賠償額は、1,385,649円で訴訟費用12,000円と切手代5,700円がかかりました。切手代はあまったら戻ってきます。損害賠償額の詳細は、以下に示す通りです。

1.治療費:35,949円(自賠責保険支払の不足分)
2.人口歯冠の取替え費用:220,000円
3.文書料:10,900円(自賠責保険請求のための診断書作成費用)
4.衣料費:30,000円
5.慰謝料:468,800円(弁護士算出(青本)と自賠責保険算出の差額)
6.後遺症請求:500,000円(頭に傷が2箇所、口に傷が1箇所、前歯が1歯欠損
7.迷惑料:120,000円(加害者は任意保険に加入しておらず、事故発生から28ヶ月経過。事故処理をなにもしてくれないことへの精神的苦痛)

第1回公判

・被告人として当人が出席したのだが、やっぱり親父がついてきた。久しぶりに加害者本人を見ました。今回、親父は傍聴人のようです。

・裁判官が、この事件については、和解を勧めることになるだろうとコメントされました。被告人に対して、任意保険に入っていないのだから分割でも支払うことを検討してくださいと付け加えました。今回は、提出書類の確認で終わりました。警察の実況見分調書を取り寄せるように裁判官に勧められましたが、私は要らないと主張し、被告が取り寄せることで決着。相手から答弁書が出ているので、次回までに反論を提出することになりました。この答弁書が曲者で、飛び出した子供が悪いと書いてあります。また、今まで示談に応じなかったくせに、平気で話し合いに応じると書いてありました。思ってもないくせに・・・

実況見分調書

・裁判所から連絡があったのでに警察の実況見分調書のコピーをもらいに行きました。白黒コピーは無料だが、カラーコピーは近くのコンビニでお金を払ってコピーしました。実況見分調書の内容は、今回初めてみました。被害者は救急車で運ばれたので、加害者の証言で作成されたのだと思います。事故当日に事故現場の家の駐車場に車がなかったことや私の主張が正しいことが確認できました。もし、加害者がうその証言をしていたらどうなっていたのでしょう?次回の裁判に向けて相手に答弁書を作成して提出しました。

第2回公判

・今日はなんと被告人が欠席!親父が代理人として出席してきました。加害者本人に事故に対する反省があるのか疑問です。今日は、警察の実況見分調書を被告が証拠として提出するように裁判官から勧められ、被告が承諾しました。再度、和解を勧めることになるだろうと裁判官がコメントし、被告は了解しました。示談を2回も放置していたくせに!

・自賠責保険の他にもお金を支払う意思があるかとの問いかけに「はい」と被告人の親父が答えました。(本当か???)私は、被告人本人と示談したい(この親父には罵詈雑言を浴びせられている)と申し出たが、金銭の問題なので、必ずしもそうはならないと裁判官に言われた。結局、裁判も事務手続きなのだろうか?最後に、この裁判は、過失割合と請求金額について争うことになると裁判官からコメントがありました。

・裁判官から、次回は被告人本人が必ず出席して、事故状況の証言(嘘をついたら偽証罪?)を行う様に被告側に指示し、原告は子供なので事故前後の状況を証拠書類として提出するように原告側に指示して閉廷。

第3回公判

・30分前に裁判所に行ったら、被告の反論書をもらいました。内容は、いいたい放題で反省の色がまったくありません。これは、次回までに反論書を提出することにします。

・今日は、被告が事故状況の証言をする予定です。被告は、茶髪に作業着といういでたち。当然、親父もついてきました。ネクタイしろとは、言わないが汚い格好にびっくりしました。そして驚くことに、被告は、事故状況の証言で警察の実況見分調書と違うことを証言したのでした。お前が証言して作成された資料じゃないのか?だんだん知恵がついてきたのか、自分に有利な証言をしているようだ。一番驚いたことは、被告は罰金も減点も無かった事でした。事故直後は、被告がきちんと対応すると言う発言にだまされて、被告が困らないように警察に証言したからでしょうか?とっても反省しています。

・今回の証言のテープを貰う様に手続きして、今日は、閉廷。

第4回公判

・またもや加害者本人は欠席。もう、あきらめてしまいました。これが相手の作戦でしょうか・・・

・今回は、和解に向けての話し合いが行われました。加害者本人と話し合っても良いが、加害者の親父は信用できないので、顔をあわせての話し合いは断りました。請求内容について確認し、将来発生する費用には利息を考慮して減額されること。洋服代は減価償却があることを仲介者から告げられました。相手に対してどの程度の金額を払う意思があるのかを確認したところ、請求額の半額も考えていないとのこで、今回は和解できませんでした。と言うかこの被告に、金を払う気があるのでしょうか?・原告には、裁判官から入院/通院実績を準備書面で提出するように指示があり、被告には、損害賠償金額に関する意見があれば提示するように指示がありました。

・任意保険に加入していないにもかかわらず、金を払う意思がないなんてどういう人間なのだろう・・・裁判に加害者本人が出てこないのも納得いかない。交通事故は、被害者が損をするという話があるが、本当のようだ・・・

第5回公判

・今回もやっぱり加害者本人は欠席。

・加害者側は、50万円の金額を提示してきました。まだまだ私の思いとはまだ開きがあります。仲介人は、あれこれと理由を付けて和解を勧めてきます。和解が成立すると報酬でもあるのでしょうか?この金額で和解したほうが良いのか判断できないので、弁護士と相談して回答することにしました。裁判官からは、被害者側にも過失があることや将来の治療費の支払いには利息分が減額されること、さらに慰謝料も日割り計算されることを言われました。今のご時世、利息など無いに等しいのに・・・(昔の利息で計算されるらしい)

・歯は3本以上の欠損が交通事故では後遺症の対象なのですが、そんなものなのでしょうか?いまどき、小学校6年生で一本も虫歯になっていない子供は少ないと思います相手に危害を加えても、インプラント治療すれば終わりなのでしょうか?人間の体は、ものとは違うと思うのですが・・・

弁護士相談

・先週、和解の件で弁護士に相談してきました。会社の無料弁護士相談を利用したのですが、結論から言うとまったく役に立たちませんでした。やっぱり、弁護士は庶民の味方ではないようです。お金にならない相談には身が入らないのでしょう。交通事故裁判といっても訴訟の金額が少ないので、和解を勧められました。私が準備した資料など目も通さずに。結局、常識のない加害者は失うものがないのでしょう!私の考えている最低ラインで和解できないなら、裁判で白黒つけるしかない様です。どんなに時間がかかっても、結局損をすることになっても・・・

・論点は、子供が飛び出したことを加害者が証明できるかにあると思います。細い道で子供が飛び出すことを想定して運転するのが常識のある人の運転だと思います。相手は小学3年生なのです。そして、加害者はプロの職業ドライバーなのです。皆さんは、どう思いますか?

第6回公判

・やっと決着が付きました。60万円を加害者が支払うことで和解しました。1ヶ月以内に振り込まれる予定です。もし、支払わなければ、給料の差し押さえ等の措置をとることになりますが、加害者はちゃんと払うと言っていました。一番びっくりしたのは、被告からは車の修理代は請求しないと言われたことです。いったい何を考えているのでしょう?

・加害者本人は、今回も出席しませんでした。はたして加害者が反省しているのかは疑問です。きっと、和解金も親が立て替えるのでしょう。

和解金の支払い

・銀行振り込みするようになっていたのに、加害者の父親が解決金を持ってきました。見たくもない顔を見てしまいました。加害者本人は、最後も現れませんでした。加害者は、事故を起こしたことを反省しているのでしょうか?

・結局、自賠責保険120万円+和解金60万円でこの事件は決着しました。最初に請求した金額に近いのでこれで納得することにします。(納得いきませんが・・)お金をもらっても、子供の歯は元にはもどりません。とても残念なことです。いまでも、虫歯は1本もありません。

この事故を振り返って

・今回の裁判を通して感じたのは、正義は無いということです。被害者の立場になって考えられていない保険請求。小額では親身にならない弁護士。任意保険に入っていなかったのに、反省していない加害者。息子をあまやかせている、加害者の父親。結局、被害者が馬鹿をみるようです。

・事故から3年が経過しました。私が裁判をおこしていなかったら、今回の件は時効が成立していました。今回学んだことは、外見は人柄を表すということです。最初は加害者は反省しているような顔をしてきます。同情せずに、厳しく対処しましょう。また、今回の事故を通して、法律は被害者を守ってくれないことが判りました。皆さんも、交通事故にはくれぐれも注意してください。